ウルトラマンティガ第1話「光を継ぐもの」は、とても美しい物語の始まりです。TPCやGUTSが紹介される。主人公が導かれる。ウルトラマンティガが初めて姿を現す。そして敵を倒す。表面だけを追えば、物語の導入として極めて王道の一話です。
しかし、その中にはこれから『ウルトラマンティガ』という作品が描いていく哲学が、すでにいくつも散りばめられています。今回と次回の2回に分けて、第1話「光を継ぐもの」を、神話の始まりという視点から深掘りしていきます。
ダイゴは導かれた主人公であると同時に自ら選んだのではないか
ダイゴだけが強く信じたティガ
地球に落下した隕石の中から、彗星型のタイムカプセルが発見されます。そこからホログラムとして現れたのが地球星警備団を名乗る白髪の女性・ユザレでした。
ユザレは地球に大異変が起こり、その兆しとして「大地を揺るがす怪獣ゴルザ」と「空を切り裂く怪獣メルバ」が復活すると告げます。
それを聞いたダイゴは、モンゴルに現れた怪獣を即座にゴルザだと判断します。
さらにユザレは、かつて地球を守っていた巨人がティガのピラミッドにその体を残しており、大異変から地球を守るためには、巨人を蘇らせなければならないと語ります。しかし、肝心の「巨人を蘇らせる方法」の直前でホログラムは途切れてしまいます。
カシムラ博士はタイムカプセルを「いたずらにしては手が込んでいる」とどこか呆れたように受け流し、ムナカタ副隊長も、モンゴルに現れた怪獣が本当にゴルザなのかについて慎重な姿勢を崩しません。
ところが、その後ユザレの予言通りメルバまで出現すると、ダイゴはタイムカプセルが本物であると確信します。そして、ゴルザとメルバが現れた以上、あとはティガの巨人を見つけなければならないと訴えます。
それに対してイルマ隊長は、そもそもティガがどこにいるのかと問い返します。
周囲がまだ慎重に状況を見極めようとしている段階から、ダイゴだけはユザレの言葉を強く信じています。
十分な裏付けがそろう以前から、ダイゴには理屈だけでは説明しきれないほど強くユザレの言葉を信じ、ティガを探そうとする衝動があるように見えます。
本当に導かれただけなのだろうか
ダイゴが誰よりも早く巨人の存在を信じたことだけを見れば、彼は最初からティガへ導かれる「選ばれた主人公」だったと捉えることができます。
しかし、その後の行動を追っていくと、それだけでは説明しきれないものが見えてきます。
GUTSがティガのピラミッドを捜索していた際、ダイゴは橋の上でユザレの声を聞き、その先に現れたピラミッドへ真っ先に走っていきます。仲間に止められても足を止めず、ピラミッドに触れ、その内部へ入り、さらに巨人の石像へ自ら近づいていきます。
やがてゴルザとメルバが接近し、ムナカタ副隊長から撤退を命じられた時も、ダイゴは巨人を蘇らせる方法はないのかと食い下がります。
そして、ゴルザとメルバによって巨人の石像が次々と破壊され、最後に残ったティガの石像まで壊されようとした時、ダイゴはガッツウィングで怪獣へ向かっていきます。
しかし、その機体に搭載されているのは怪獣を倒せるような武器ではありません。それでもダイゴは、ティガの石像を守ろうとして危険へ飛び込んでいきます。
この時点で、ダイゴは自分がティガになる存在であることを知りません。
ユザレのホログラムは「巨人を蘇らせる方法」を告げる直前で途切れており、その答えが明かされるのは第1話の最後です。
巨人を蘇らせる方法とは、ダイゴ自身が光となることでした。
つまりダイゴは、自分が光となり、ティガを蘇らせる存在であることを知らないまま行動していたのです。
だからこそ、ダイゴは「ティガになること」そのものを選んだとは言えません。
しかし彼は、怪獣という脅威から地球を守るためにティガを蘇らせようとし、破壊されようとするティガの石像を守るため、自ら危険へ飛び込んでいます。
ユザレの言葉が示す通り、ダイゴは最初から光となる存在として導かれていたのでしょう。
しかし、その導きがダイゴ自身の選択を代わりに行ったわけではありません。
選ばれたから守ったのではない。守ることを選び続けたダイゴは、その先で光となった。
第1話におけるダイゴは、「選ばれた主人公」であると同時に、自ら「守る側に立つこと」を選んだ主人公でもあるのではないでしょうか。
ダイゴ、レナ、ホリイ——それぞれが境界へ接続する時
境界を越えるダイゴ
ダイゴは、自分がティガになる存在だと知る以前から、少しずつティガへと近づいていきます。
周囲がまだ慎重な姿勢を見せる中、誰よりも早くユザレの言葉を信じる。ピラミッドを発見すると、仲間に止められても真っ先に駆け寄り、その内部へ入っていく。そして、そこに残された巨人の石像に近づき、自らその足に触れます。
やがてダイゴは光となり、ティガの身体と一体化します。
人間としてティガを探していたダイゴ自身が、最後には人間と巨人の境界を越え、ティガになります。
第1話におけるダイゴは、未知の領域を外側から観察する人物ではなく、自らその境界を越えていく人物として描かれているように見えます。
感覚的に境界へ近づくレナ
一方、レナはダイゴのように、最初からユザレの言葉を強く信じているわけではありません。
タイムカプセルを覆っていた隕石が古代の地層でできていると知らされた際には「そんな……」と戸惑いを見せています。
しかし、レナには未知のものへ感覚的に近づいていくように見える描写がいくつかあります。
一つ目は、隕石から取り出された彗星型のカプセルへ、思わず手を伸ばそうとする場面です。ホリイはすぐにそれを止めますが、レナは正体のわからないものに対して、まず触れようとしています。
もう一つ気になるのが、ティガのピラミッドを捜索している際、レナが川辺を歩き、水の中へわずかに足を踏み入れる場面です。
後にダイゴは光となり、ティガとして戦ったあと、その川を駆け抜けます。これはダイゴ自身が川に何らかの意味を見出しているということではありません。あくまで演出上の配置として読んだ場合の話です。しかし、川を「境界」の象徴として読むならば、人間と巨人という二つの領域を経験したダイゴが川の中を駆ける描写と、その以前にレナが何気なく水へ足を踏み入れている描写には、興味深い呼応を見ることができます。
もちろん、第1話だけで川が明確に境界を象徴していると断定することはできません。
しかし、タイムカプセルへ手を伸ばす場面と重ねて見ると、レナは未知を理屈で理解する以前に、感覚的にその境界へ近づいてしまう人物として描かれている可能性があります。
まず頭で理解しようとするホリイ
それに対してホリイは、未知のものをまず理解可能な形へ変換しようとします。
タイムカプセルへ触れようとしたレナを止める場面からも、未知のものへ不用意に接触せず、その正体を慎重に確かめようとする姿勢がうかがえます。
ユザレの話している言葉が理解できないと分かると、ホリイはサウンドトランスレーターを使って翻訳を試みます。
理解できないものを、そのまま神秘として受け入れるのではなく、科学技術によって理解できる情報へ変換するのです。
さらにティガのピラミッドを捜索している際には、
「巨人がすっぽり納まるようなピラミッドが衛星カメラで探知できひんなんて絶対あり得へんよ。」
と発言します。
ホリイは未知そのものを拒否する人物というより、未知であっても観測・分析できるはずだと考える人物なのでしょう。
ダイゴが境界を越え、レナが感覚的に境界へ近づくのに対して、ホリイはその境界を分析し、理解可能なものへ変えようとします。
三人の異なる接続の仕方
第1話では、ダイゴ、レナ、ホリイの三人が、それぞれ異なる方法で未知の世界へ接続しているように見えます。
ダイゴは境界を越える。
レナは境界へ感覚的に近づく。
ホリイは境界を分析し、理解しようとする。
同じ未知の出来事を前にしながら、三人はまったく異なる方法でそれに触れています。
この三人の配置は、『ウルトラマンティガ』という物語が、未知や神秘とどのように向き合っていくのかを考える上で、興味深いものではないでしょうか。
橋を渡るということ
橋を象徴として読むならば、ダイゴやGUTSの隊員たちが橋を渡るというこの何気ない場面は、物語の始まりを示す重要な演出として機能している可能性があります。
まず橋を、人間の現実と、まだ理解することのできない未知の領域をつなぐ境界として仮定してみます。
ダイゴは橋の中央で、ユザレから「ダイゴ、ダイゴ」と呼びかけられます。そして、その先にピラミッドが姿を現し、ダイゴは橋を駆け抜けていきます。
ここで橋を現実と未知の領域の境界として読むならば、ダイゴはその境界上でユザレの声を聞き、誰よりも先に未知の側へ踏み込んでいく人物として描かれているように見えます。
そして、ピラミッドへ向かうダイゴを見たGUTSの隊員たちは、彼を止めようとしながらも、最終的にはその後を追って橋を渡ります。
この描写は、ダイゴだけでなく、彼と行動をともにするGUTS隊員たちもまた、ティガをめぐる未知の出来事に接近し、その内側へ踏み込んでいくことを示しているようにも見えます。
特に興味深いのがホリイです。
前章で触れたように、ホリイは未知のものをまず観測し、分析し、理解可能な形へ変換しようとする人物として描かれています。
そんなホリイもまた、ダイゴを追って橋を渡ります。
この場面を象徴的に読むならば、ホリイは科学者として未知を外側から観測するだけではなく、その現場へ自ら踏み込む人物としても描かれているように見えます。
そして、この仮説を採用するならば、一つ気になる点があります。
なぜ物語の重要人物であるイルマ隊長は、この橋を渡らなかったのでしょうか。
もちろん、イルマ隊長は司令塔として本部に残り、現場へ指示を出す役割を担っているため、物語上は何も不自然ではありません。
それでも、他の主要メンバーが橋を渡る中でイルマだけがその場にいないという配置には、今後の物語を考える上で何か意味があるのかもしれません。
まとめ
『ウルトラマンティガ 第1話「光を継ぐもの」——境界を越えるものたち——』の記事では、ダイゴやGUTSの隊員たちがどのように未知の領域へ接近していくのか、それぞれの立ち位置を通して深掘りしてきました。
次の記事では、ゴルザとメルバがどのような役割を担っているのか、ティガを神話として読み解くと何が見えてくるのか、そして「光を継ぐもの」とは何を意味するのかについて考えていきたいと思います。